朝井リョウ

朝井リョウさんが1万円を手に本屋で買った6冊と、薦めた本まとめ(2025年・本ツイ!)

出典:出版区『本ツイ!』

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こばん
こばん

今度は、本屋で1万円の買い物動画?

しゅり
しゅり

はい。朝井リョウさんの話をたっぷり聞ける34分でした。見終わったら、朝井さんの本まで読みたくなっていました。

小説家の朝井リョウさんが、本屋で買い物をする動画を見ました。『何者』で直木賞を、『イン・ザ・メガチャーチ』で2026年の本屋大賞を受賞している方です。

動画は、トーハンの公式チャンネル出版区の「本ツイ!」の第127回。正式名は「本屋ついてって1万円あげたら何買うの?」で、著名人に1万円を渡して、本屋での買い物にカメラが同行する企画です。

この記事では、朝井さんがその1万円で買った6冊と、売り場を歩きながら語っていた本を、書名の分かるものは全部まとめました。

朝井さん小説家が本屋に行くときの気持ち

でもすごい覚悟を持って書店に向かっているので、一緒に味わっていただければ…!

本屋に行くのに、覚悟? その意味は店に入った直後から少しずつ見えてきて、動画のいちばん最後で種明かしされます。

1万円で買った6冊

入店した朝井さんが最初に話したのは、小説家にとって書店の入口が鬼門だという話でした。入口に、残ったサイン本を積んだカゴが置かれている店があって、目に入ってしまうと「心にダメージを負う」ことがある。この店にはそのカゴが無く、すんなり入れたようでした。

そんな入口を抜けたところから、買い物が始まります。まずは、実際にレジまで行った6冊。並びは動画に出てきた順です。

『ババヤガの夜』|まだ読めていなかった、ダガー賞の1冊

買った6冊のうち、本編で最初に登場したのがこの本です。まだ読めていなかったそうです。英訳版が2025年のダガー賞(イギリスの推理作家協会の賞)の候補になった話から、日本の小説が翻訳されて読まれるようになった流れへ。デビューした15年前には考えられなかったことで、めちゃくちゃうれしい、と話していました。

王谷晶

ババヤガの夜(河出文庫)

ババヤガの夜(河出文庫)

喧嘩の腕を買われた新道依子が、暴力団会長のひとり娘の運転手兼護衛を任されるところから始まる物語です。守るうちに、彼女を縛っている秘密に触れていきます。英訳版が2025年に英国推理作家協会のダガー賞(翻訳部門)を受賞していて、日本の作家の受賞はこれが初めてです。

出版社
河出書房新社
刊行
2023年5月
仕様
文庫・208ページ
楽天評価
3.9/5(1,193件)
値段
定価 ¥748

『渇愛 頂き女子りりちゃん』|宣伝文の一節が気になって、カゴ入り

この本は、朝井さんが前から買おうかなと思っていた1冊とのことです。売り場で見つけて、「カゴ入りということで!!」。気になったきっかけは、宣伝の文とのことでした。いろいろなノンフィクションを書いてきた著者が感情移入して書き手としてのバランスを失いかけた、という趣旨のことが確か書いてあって、すごく気になってしまったのだそうです。

朝井さんカゴに入れる前に

もちろん事件の内容そのものも、まとまった文章で読んでみたい

しゅり
しゅり

書き手としてのバランスを失いかけた、というところ。この話を聞いて、私も気になってしまいました。りりちゃんという人は、いろんな人の心に入っていって事件になったと思うので、そういう力があるのかな、と。

宇都宮直子

渇愛 頂き女子りりちゃん(小学館)

渇愛 頂き女子りりちゃん(小学館)

男性たちから1億5千万円ほどをだまし取ったうえ、手口をマニュアルにして販売し、逮捕された女性は、「頂き女子りりちゃん」と呼ばれました。彼女は何者だったのかに著者が迫っていくノンフィクションで、小学館ノンフィクション大賞(第31回)を受けています。

出版社
小学館
刊行
2025年7月
仕様
単行本・256ページ
楽天評価
3.6/5(207件)
値段
定価 ¥1,870

『帰れない探偵』|評判を聞いていた、柴崎さんの新しい本

文芸書の売り場では「あ、でもこれも買おう」と即決でした。信頼している人から、柴崎さんの新しい本が素晴らしいという評判を聞いていたそうで、たぶんこれのことだと思う、という買い方です。ここから話は朝井さん自身の同期のことに移ります。柚木麻子さんが同期で、窪美澄さんも同じ2010年デビュー。窪さんの家では、ごはんを何度もごちそうになっているそうです。

柴崎友香

帰れない探偵(講談社)

帰れない探偵(講談社)

探偵の「わたし」はある日、事務所を兼ねた自宅に帰れなくなります。そのまま、坂だらけの街、夜にならない夏の街と、世界のあちこちを「帰れない」まま巡っていく物語です。『百年と一日』の柴崎友香さんによる、新しい形の探偵小説です。

出版社
講談社
刊行
2025年6月
仕様
単行本・304ページ
楽天評価
3.6/5(185件)
値段
定価 ¥2,035

『星が人を愛すことなかれ』|「人生を使い切る」が、ここにもあった

これも、探していた1冊とのことです。次の自作『イン・ザ・メガチャーチ』でファンダム経済をテーマにして「人生を使い切る」という表現を使ったら、同じ言葉がこの本にも使われているのを見つけた、というつながりです。「パクったわけじゃないんです」と断りながらの紹介でした。

朝井さん買うと決めた理由

「人生を使い切る」っていう言葉が、ここにも使われてる…!! しかも斜線堂さんだったから、これは絶対に買おう

斜線堂有紀

星が人を愛すことなかれ(集英社)

星が人を愛すことなかれ(集英社)

解散が見えていた地下アイドルグループ「東京グレーテル」が、赤羽瑠璃というひとりのカリスマの存在で人気グループになっていきます。描かれるのは、ステージを降りたあとの「推される側」の、恋と生のほう。ウェブに掲載された作品へ書き下ろしを足した短編集です。

出版社
集英社
刊行
2024年8月
仕様
単行本・224ページ
楽天評価
4.0/5(102件)
値段
定価 ¥1,650

『ROCA コンプリート』|コミック売り場で出会った完全版

コミック売り場で出てきたのが、いしいひさいちさんのこの完全版です。いしいひさいちさんというと朝日新聞の4コマ『となりのやまだ君』『ののちゃん』の印象ですが、実家で朝日新聞を取っていた朝井さんにとってもそのイメージだったようで、「この表紙のイメージあまりない」と言っていました。売り場では「泣ける、いしいひさいち?」と、店頭の文句を読み上げていました。

いしいひさいち

ROCA コンプリート(徳間書店 ジブリコミックス)

ROCA コンプリート(徳間書店 ジブリコミックス)

いしいひさいちさんが自費出版で発表して話題になったシリーズ「ROCA」の完全版です。本編とエピソード集、短編集の3冊ぶんが1冊に入っています。主人公・吉川ロカを描いた本編は、「このマンガを読め!」の2023年版で1位に選ばれた作品です。

出版社
徳間書店
刊行
2025年6月
仕様
コミック・264ページ
楽天評価
4.6/5(15件)
値段
定価 ¥1,980

『後悔しない選択』|偶然見つけて、「読みたいんですけど!?」

最後の1冊は、完全に偶然の出会いでした。多分ちょうど良いくらいだから、と締めの1冊に。バレーボール元日本代表キャプテン・古賀紗理那さんの初めてのエッセイ集です。

朝井さん偶然見つけて

古賀さんの本がある!? 読みたいんですけど!?

古賀紗理那

後悔しない選択(KADOKAWA)

後悔しない選択(KADOKAWA)

バレーボール元日本代表キャプテン・古賀紗理那さんが初めて書いたエッセイです。16歳で日本代表に入ってから、2024年8月に現役を退くまで。節目ごとに何を考えて道を選んできたのかを、自分の言葉で振り返っていきます。

出版社
KADOKAWA
刊行
2025年7月
仕様
単行本・240ページ
値段
定価 ¥1,870

会計は6冊で10,153円。153円のオーバーでしたが、はみ出したぶんは「支払わせていただきます!」と朝井さん持ちでした。

店の前半で語った本

買った6冊の合間に、売り場を歩きながら語られた本がたくさんあります。ここからは、買ってはいないけれど語っていた本。並びはどの章も動画に出てきた順です。

『めんどくさがりなきみのための文章教室』|入口で見つけた、推薦文を寄せている本

入口の特集「ゼロからの読書教室」で出てきたのが、はやみねかおるさんのこの本です。実はこれ、朝井さんが推薦文を寄せている1冊。はやみねさんが人前に出るときに頬へ絆創膏を貼る話から、「作家はやみねかおる」として何かをひとつ「纏う」という話につながっていきました。すでに持っている本だそうで、この日は買わずに「みなさん読んでみてください」でした。

はやみねかおる

めんどくさがりなきみのための文章教室(飛鳥新社)

めんどくさがりなきみのための文章教室(飛鳥新社)

作文やメールから小説まで、文章の書き方をぽっちゃりした猫が小説仕立てで教えてくれる1冊です。『名探偵夢水清志郎』シリーズなどで知られる児童書作家・はやみねかおるさんの実用書で、朝井リョウさんも推薦文を寄せています。

出版社
飛鳥新社
刊行
2020年3月
仕様
単行本・256ページ
楽天評価
4.4/5(110件)
値段
定価 ¥1,320

『マ・エノメーリ』|纏っていない藤井さんの文章が読める

「纏う」の話の続きで出てきたのが、藤井隆さんのエッセイです。藤井さんのことは元々すごく好きで、こういう人間になれたら一番いいよな、と日頃思っているそう。藤井さんはこれまでエッセイをあまり書いてこなかった方だそうで、その理由として、文章だと纏うことができなくて照れくさい、といったことが書いてあったのだとか。だからこそ「纏っていない藤井さんの文章が読める」と薦めていました。

この「纏う」の流れで、朝井さん自身の話も出ます。自著の意図はあまり話さないほうがいいと思っているタイプだそうで、その理由が、この言葉でした。

朝井さん自著の意図を話さない理由

自分が答えみたいなのを出しちゃうと、まだ鳴っているシンバルを自分で止める

  • コメント欄より。高評価612件。
    まだ鳴ってるシンバルを止めるって表現にすごくハッとさせられました!こんなに豊かな言葉がさらっと出てくることに尊敬を感じます

藤井隆

マ・エノメーリ(KADOKAWA)

マ・エノメーリ(KADOKAWA)

藤井隆さんが、人付き合いや言葉選び、仕事や生い立ちのことまでを本音でつづった書き下ろしのエッセイです。8万字を超える全文を自分で書いたもので、これまで語ってこなかった話も入っています。

出版社
KADOKAWA
刊行
2025年5月
仕様
単行本・256ページ
楽天評価
3.9/5(21件)
値段
定価 ¥1,650

『口に関するアンケート』|「これだったら読むだろうな」と思える一口分

小さな判型のこの本から、サイズの話になりました。ふつうの本だと、この分量を自分は読むのか、「積読ばっか増えちゃうんじゃないか」と見送ってしまうことがある。その点この小ささなら、これなら読むだろうと思える。そういう本はいままで無かった、「すごい発明だな」と、判型そのものを褒めていました。

背筋

口に関するアンケート(ポプラ社)

口に関するアンケート(ポプラ社)

ホラー『近畿地方のある場所について』でデビューした背筋さんの1冊です。全63ページ・605円で、文庫より小さい手のひらサイズの判型。その小ささ自体が話題になりました。

出版社
ポプラ社
刊行
2024年9月
仕様
単行本・63ページ
楽天評価
3.4/5(817件)
値段
定価 ¥605

『ミトンとふびん』|むちゃくちゃ染みる。本棚にずっといてほしい

超好きな1冊として出てきたのが、吉本ばななさんのこの本です。難しい言葉は使われていないし、大きな起承転結がある物語でもない。そう続けたあとの言葉が、こちらでした。

朝井さん『ミトンとふびん』について

むちゃくちゃ染みる。本棚にずっといてほしい

「幻影という言葉を使って書いてる」パートが本当に素晴らしい、とも。自分でも持っている本だそうで、この日は買っていません。

吉本ばなな

ミトンとふびん(幻冬舎文庫)

ミトンとふびん(幻冬舎文庫)

舞台は金沢や台北、ローマ、八丈島。ふだんと違う街角で、登場人物たちの抱えた悲しみが、すこしずつ小さな幸せへ形を変えていく6つの物語が入った短編集です。第58回の谷崎潤一郎賞を受賞しています。

出版社
幻冬舎
刊行
2024年2月
仕様
文庫・264ページ
楽天評価
4.0/5(202件)
値段
定価 ¥759

『スマホ時代の哲学』|答えを出さないようにしている姿勢が誠実

最近読んだ本として挙がったのが、この新書です。三宅香帆さんが推薦コメントを寄せています。さきほどの『めんどくさがりなきみのための文章教室』にも三宅さんの名前が出ていて、朝井さんは「本にまつわる全ての仕事が一旦三宅さんを経由する事件」と笑っていました。中身については、作者ができるだけ答えを出さないようにしていて、その「姿勢がすごい誠実な方だなと思う」という薦め方です。

谷川嘉浩

増補改訂版 スマホ時代の哲学(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

増補改訂版 スマホ時代の哲学(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

いつでもつながれてしまう「常時接続」の毎日で、ひとりで考える時間をどう取り戻すか、を掘り下げる哲学の本です。もとの本へ1万8千字を超える増補と、全体の手直しを加えた新書版にあたります。

出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
刊行
2025年4月
仕様
新書・384ページ
楽天評価
4.0/5(164件)
値段
定価 ¥1,540

『ブレイクショットの軌跡』|「3人受賞とかあるんじゃないか?」と思っていた候補作

読了済みの1冊として出てきた、逢坂冬馬さんの直木賞候補作です。その回は候補が力作揃いだという感触で、「3人受賞とかあるんじゃないか?」とまで思っていたそうで、発表の日はちょっとワクワクした日だったのだとか。

逢坂冬馬

ブレイクショットの軌跡(早川書房)

ブレイクショットの軌跡(早川書房)

1台のSUV「ブレイクショット」が持ち主を変えながら走り続け、期間工、板金工、不動産会社と、関わった人たちの物語が8つ連なっていく1冊です。第173回直木賞の候補になりました。

出版社
早川書房
刊行
2025年3月
仕様
単行本・584ページ
楽天評価
4.3/5(604件)
値段
定価 ¥2,310

影響を受けた小説の話

「作家・朝井リョウに影響を与えた本とは?」というコーナーで、おすすめの小説と読書遍歴の話が続きます。はじめは、はやみねかおるさんの青い鳥文庫。同じものをずっと読み返すような読み方だったそうです。同じ青い鳥文庫の『パスワード』シリーズ(松原秀行さん)と『料理少年Kタロー』(令丈ヒロ子さん)も、小学生のころにひたすら繰り返し読んでいたそうです。中学2年生のときに金原ひとみさん・綿矢りささんが芥川賞を同時受賞し、同じ回の直木賞は京極夏彦さんと江國香織さんでした。この顔ぶれを「妖怪の代」と呼んでいました。「そんなに年齢の離れているように見えない人達がいるッ…!!!!」という衝撃が、若い純文学の書き手の作品なら読めるんじゃないか、という期待につながったとのこと。

『じっと手を見る』|読み終わった後は、痣になってたりする

同期の窪美澄さんの本では、解説も書いたこの1冊が「すごい大好きで…!!」。窪さんの本の説明として出てきたのが、この言葉です。

朝井さん窪美澄さんの本について

心の柔らかいところとか痛いところに手を当ててくれていると思いきや、読み終わった後は痣になってたりする

手を当てるだけではなく、グッと押され続けていたかのような、優しいだけではない小説を書いてくれる人。幸せとは言いづらい恋愛小説を読みたい人には、すっごくおすすめなのだそうです。

しゅり
しゅり

この「痣になってたりする」も、少し前の「まだ鳴っているシンバルを自分で止める」も。表現が魅力的だなと思いました。

窪美澄

じっと手を見る(幻冬舎文庫)

じっと手を見る(幻冬舎文庫)

富士山の見える町で介護士として働く日奈と海斗は、かつての恋人どうし。東京から通ってくるデザイナーの存在で町の外へ思いが募る日奈と、家族を支えるために町を出られない海斗。ふたりの気持ちが絡まっていく、連作の恋愛小説です。

出版社
幻冬舎
刊行
2020年4月
仕様
文庫・320ページ
楽天評価
3.7/5(103件)
値段
定価 ¥693

『一瞬の風になれ』|自分の中のマスターピース

読書遍歴の話の中心にあったのがこの本です。朝井さんの中では、最初から最後まであっという間に読まされるのが結局いちばん強くて、それを上回るものは何も無いのだそうです。「一番星みたいな本」で、今でも好きなシーンを読み返すとのこと。

朝井さん読書遍歴の話で

自分の中のマスターピースは『一瞬の風になれ』

佐藤多佳子

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-(講談社文庫)

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-(講談社文庫)

高校から陸上を始めた神谷新二と、天才スプリンターの幼なじみ・連。強豪でもない春野台高校陸上部で、ただ速く走りたいという気持ちが部を変えていく青春小説です。文庫は全3部で、これは第一部にあたります。

出版社
講談社
刊行
2009年7月
仕様
文庫・272ページ(全3部)
楽天評価
4.1/5(402件)
値段
定価 ¥660

『パーク・ライフ』|「純文学って呼ばれるものなんだ」との出会い

吉田修一さんは大好きで、出ている本はたぶん全部読んでいるそうです。中学生のときに『パーク・ライフ』を読んで、全然分からなかった。でもそれが「純文学って呼ばれるものなんだ」という出会いになった。「分からないものとの出会いもすごい大事じゃないですか?」という話でした。

吉田修一

パーク・ライフ(文春文庫)

パーク・ライフ(文春文庫)

地下鉄で人違いのまま話しかけてしまった相手と、日比谷公園で再会するところから始まります。他人どうしのままの男女の、近いような遠いような距離感を描いた芥川賞受賞作です。

出版社
文藝春秋
刊行
2004年10月
仕様
文庫・192ページ
楽天評価
3.1/5(414件)
値段
定価 ¥715

『パレード』|読んで、友達に会うのが怖くなった

同じ吉田修一さんで、大学生のときの「鮮烈な読書体験」として挙がったのがこの本です。

朝井さん大学生のときの読書体験

大学生で『パレード』を読んで、友達に会うのが怖くなって…!

「書き手としてもすごく憧れる人なので」と、作家としての吉田さんへの敬意も添えられていました。

吉田修一

パレード(幻冬舎文庫)

パレード(幻冬舎文庫)

都内の2LDKで一緒に暮らす男女4人は、本音を出さないまま、ゆるくて心地よい共同生活を続けています。そこに5人目のサトルが加わって、少しずつ空気が変わっていく物語です。

出版社
幻冬舎
刊行
2004年4月
仕様
文庫・309ページ
楽天評価
3.7/5(777件)
値段
定価 ¥693

『め生える』|エンタメ作家の「中編欲」に応えるレーベルから

U-NEXTの「100 min. NOVELLA」という中編小説のレーベルの話になり、その1冊として高瀬隼子さんのこの本が出てきました。エンタメ側の作家には中編を発表する場が少ないそうで、その「中編欲」を拾ってくれるこのレーベルが出たときは、「誰が考えたんだろう?」とすごいなと思ったそうです。内容も自分にぴったりきた、と話していました。

高瀬隼子

め生える(U-NEXT)

め生える(U-NEXT)

原因不明の感染症で、中高生以下の子どもたちを除いてみんな髪が抜けた世界の話です。もとから薄毛を気にしていた真智加はほっとしたはずが、新しい悩みに直面します。みんな平等になったはずなのに別の分断が芽生えてくる、約100分で読める中編です。

出版社
U-NEXT
刊行
2024年1月
仕様
単行本・168ページ
楽天評価
3.3/5(115件)
値段
定価 ¥990

『パッキパキ北京』|「この2冊、超好き」の1冊目

綿矢りささんの話は、本題の前にまずインスタでした。綿矢さんは実はインスタを開設していて、そこで宇野千代さんのコスプレをしているのだそう。「絶対に見てください」とのことです。そのうえで最近の2冊として挙がったのが、『パッキパキ北京』と『嫌いなら呼ぶなよ』です。『パッキパキ北京』は動画のあとの2026年6月に文庫になっていて、下で紹介しているのはその文庫版です。

朝井さん最近の綿矢りさ作品について

この2冊、超好き

綿矢りさ

パッキパキ北京(集英社文庫)

パッキパキ北京(集英社文庫)

コロナ禍の北京へ、単身赴任中の夫に呼ばれて渡った菖蒲が主人公です。隔離もものともせず、現地の料理を食べ歩き、春節を楽しみ尽くす「人生エンジョイ勢」の駐在妻ライフを勢いよく描きます。綿矢りささん自身の中国滞在の経験が下敷きになっています。

出版社
集英社
刊行
2026年6月
仕様
文庫・168ページ
楽天評価
3.6/5(96件)
値段
定価 ¥660

『嫌いなら呼ぶなよ』|「この2冊、超好き」の2冊目

「超好き」の2冊のもう1冊です。動画の公開に少し先立つ2025年8月に河出文庫になっていて、下で紹介しているのはその文庫版です。楽天ブックスには新品の取り扱いが無いため、購入ボタンはAmazonだけです。

綿矢りさ

嫌いなら呼ぶなよ(河出文庫)

嫌いなら呼ぶなよ(河出文庫)

バーベキューに呼ばれた先で、なぜか僕の離婚裁判が幕を開ける表題作など、笑っていいのか怖がるべきか分からなくなる4つの短編が入っています。人の心の「明るすぎる闇」へ踏み込む、ブラックな味の綿矢りさ作品です。

出版社
河出書房新社
刊行
2025年8月
仕様
文庫・224ページ
値段
定価 ¥770
Amazonで見る

『アイスネルワイゼン』|大好きな、めっちゃ嫌な話

すごく好きだったという1冊の、続く説明が「めっちゃ嫌な話です」。主人公の心情はひと文字も書かれないまま、起きたことだけが「濃淡なく」積まれていく。そういう書き方の話をしたうえで、こう薦めていました。

朝井さん『アイスネルワイゼン』の読みどころ

最後の最後に1人の人間が歩けなくなる瞬間を味わえます

その瞬間のことを、こうも言っていました。

朝井さんその瞬間のこと

何かが溢れちゃって、人の形を保っていられなくなる瞬間

しゅり
しゅり

こんな表現を聞くと読みたくなります。どんなふうに話が進んで、最後何が起きるんだろうって気になります。

三木三奈

アイスネルワイゼン(文藝春秋)

アイスネルワイゼン(文藝春秋)

ピアノ講師をしている32歳の琴音の日常が、旧友との再会をきっかけにゆっくり崩れていく表題作で、芥川賞(第170回)の候補になりました。文學界新人賞を受けたデビュー作「アキちゃん」も一緒に収められています。

出版社
文藝春秋
刊行
2024年1月
仕様
単行本・216ページ
楽天評価
3.3/5(63件)
値段
定価 ¥1,980

店の後半で語った本

『手段からの解放』|すでに読んでいた、身近なテーマの新書

「國分さんもね〜」と話し始めた新書です。すでに読んでいて、自分の小説のテーマに近い、身近な話題の本だと話していました。

國分功一郎

手段からの解放(新潮新書)

手段からの解放(新潮新書)

なにかの「ため」にやることばかりで、人生を楽しめなくなっていないか。そんな問いを掘り下げる哲学講話です。『暇と退屈の倫理学』で知られる國分功一郎さんが、楽しむこと・味わうことを取り戻す筋道を新書1冊で語ります。

出版社
新潮社
刊行
2025年1月
仕様
新書・208ページ
楽天評価
3.8/5(57件)
値段
定価 ¥968

『別れの色彩』|20年前に1ミリずれた心の、20年分

翻訳小説の棚では、「小説家自体の情報がない状態で本を読みたい」と、昔より思うようになったという話がありました。探していた本とは違ったけれど、めちゃくちゃ好きな本があった、と紹介したのがこれです。著者は1944年生まれで、年輪をすごく感じる小説だそうです。

朝井さん『別れの色彩』について

20年前に1ミリずれた心の、20年分とかを短編で書いてくれる

「めっちゃ精巧なガラス細工みたいな」小説ばかりが入っている、とも言っていました。

ベルンハルト・シュリンク/松永美穂 訳

別れの色彩(新潮クレスト・ブックス)

別れの色彩(新潮クレスト・ブックス)

男女、親子、友人、隣人。年月がたった今だから見えてくる、あの日の別れの本当の意味に向き合う短編集です。『朗読者』で知られるドイツの作家ベルンハルト・シュリンクさんの、円熟の短篇集です。

出版社
新潮社
刊行
2023年3月
仕様
全集・双書・264ページ
楽天評価
3.6/5(13件)
値段
定価 ¥2,310

『フィフティ・ピープル』|チョン・セランさんの本で、まず名前が挙がった1冊

チョン・セランさんの本では、まず『フィフティ・ピープル』の名前が挙がりました。

チョン・セラン/斎藤真理子 訳

フィフティ・ピープル[新版](亜紀書房)

フィフティ・ピープル[新版](亜紀書房)

登場するのは50人。1話ごとに主人公が入れ替わりながら、別々の人生が触れ合い、絡まり合っていく連作です。多くの読者に読まれ続けてきた代表作の日本語版に、細部まで磨きをかけた新版。韓国では韓国日報文学賞を受けた作品です。

出版社
亜紀書房
刊行
2024年10月
仕様
単行本・490ページ
楽天評価
4.1/5(17件)
値段
定価 ¥2,420

『アンダー、サンダー、テンダー』|対談相手に選ばれた理由が分かる1冊

特に印象深い作品として挙げたのがこの本です。韓国で本人と対談する前に、「きっとこれを読めば、なぜあなたとチョン・セランさんを対談の相手としてフィックスしたのか分かると思う」と言われて読んだ本なのだそうです。

チョン・セラン/吉川凪 訳

アンダー、サンダー、テンダー(クオン)

アンダー、サンダー、テンダー(クオン)

北朝鮮と境を接する町・パジュで高校時代を過ごした6人の、十代の日々とその後を軽やかに描く長編です。チャンビ長編小説賞を受けた作品です。

出版社
クオン
刊行
2015年7月
仕様
単行本・319ページ
楽天評価
3.9/5(27件)
値段
定価 ¥2,750

『レッド・アロー』|書けなくなった作家が、精神的な迷宮に迷い込む

めっちゃ作家の話、と紹介されたのがこの本です。海外はエージェント契約で、この期間にこの作品を完成させます、と約束してお金が先に入ることもあるので、日本とはプレッシャーの感じ方が違う、という解説つきで、絶対に書かなければいけないのに書けない主人公が「精神的な迷宮に迷い込んでいく」話、と薦めていました。

ウィリアム・ブルワー/上野元美 訳

レッド・アロー(早川書房)

レッド・アロー(早川書房)

デビュー作が予想外の反響を呼んだあと、次の1冊がまったく書けなくなった作家が主人公です。前払い金は使い果たし、物理学者の回想録を代筆する仕事も、当の学者の失踪で宙に浮きます。行き詰まった書き手の頭の中を旅していく長編です。

出版社
早川書房
刊行
2024年1月
仕様
単行本・328ページ
値段
定価 ¥2,970

『スイマーズ』|この日は在庫なし。「読んだことがない本」

イチオシの翻訳小説として探していたのがこの本でした。この日は在庫がなく、「また来ればいい訳ですから」と。それでも紹介の熱は高くて、区民プールに集う人たちのコミカルな連作かと思いきや、プールの底にヒビが入って2話目ぐらいから不穏になり、3話目・4話目で「全然違う空気になって…!!」。途中からは、あるキャラクターとその母親の話へ主軸がどんどん移っていって、最後は全く違う読み心地のところに着地する。展開ではなく文そのものが軌道を変えていく本だ、という説明でした。

朝井さん『スイマーズ』の読み心地

パンパンに膨らんだ風船をパッて離したみたい。どこへ行くか分かんない

「読んだことがない本」という言い方まで飛び出していました。

ジュリー・オオツカ/小竹由美子 訳

スイマーズ(新潮クレスト・ブックス)

スイマーズ(新潮クレスト・ブックス)

過食やリストラなど、それぞれの悩みを抱えて地下の市民プールに通う人たちの群像から始まり、やがて認知症が進むアリスとその娘の物語へ移っていきます。アメリカのカーネギー賞の受賞作です。

出版社
新潮社
刊行
2024年6月
仕様
全集・双書・160ページ
楽天評価
3.2/5(50件)
値段
定価 ¥2,035

漫画売り場と、食のエッセイ

『ひゃくえむ。』|この日は在庫なし。ここで買って読むつもりだった

コミック売り場でのお目当ては、こちらでした。『チ。』の魚豊さんの連載デビュー作で、近々、魚豊さんと対談することになっていて、「『ひゃくえむ。』だけ読めてない」。

朝井さん在庫なしと知って

ここでゲットして、それを読んでいこう!! 思ってたんですよ〜

残念ながらこの日は在庫がなく、買えていません。下で紹介しているのは、現在流通している新装版の上巻です。

魚豊

ひゃくえむ。新装版(上)(講談社)

ひゃくえむ。新装版(上)(講談社)

生まれつき速かったトガシは、100m走の全国1位で友達も居場所も手にしてきました。小学6年生の夏、初めて負ける恐怖を知るところから、100m走だけに人生を懸ける人たちの物語が始まります。『チ。』の魚豊さんの連載デビュー作、新装版の上巻です。

出版社
講談社
刊行
2022年3月
仕様
コミック・512ページ(新装版・上下巻)
楽天評価
4.6/5(43件)
値段
定価 ¥1,320

『365 僕のたべもの日記』|読んでいてスカッとする、食の日記

終盤に出てきたのは、すごく好きだという食のエッセイでした。岐阜出身の朝井さんいわく、東京に来てそれなりに時間がたっても「田舎者のアレが強くって…」。この本には1日の行動範囲まで書かれていて、日常の全部から東京を感じる。「そういう意味でも読んでてスカッとする!!」という、ちょっと変わった角度の薦め方でした。

麻生要一郎

365 僕のたべもの日記(光文社)

365 僕のたべもの日記(光文社)

1年365日、なにを作って誰と食べたかをつづった日記です。おうちごはんの日も、思うようにいかない日も、そのまま並んでいきます。「食べることは生きること」という惹句どおりの、食のエッセイです。

出版社
光文社
刊行
2024年1月
仕様
単行本・368ページ
値段
定価 ¥2,200
Amazonで見る

朝井さん自身の本も出てきました

書店を回る動画なので、朝井さん自身の本との遭遇もあります。話題書の棚は「ドキドキするんですよ!!」。自分の本が出たタイミングでは、置かれていないこともある。だから置いてあると、その書店のことが大好きになるのだそうです。

『そして誰もゆとらなくなった』|文庫が「置いてありました!!」

この日は「置いてありました!!」。ちょうど文庫を出したタイミングだったそうで、店頭にあったのはエッセイ「ゆとり三部作」の完結編です。コメント欄にも、朝井さんのエッセイを推す声がありました。

  • コメント欄より。高評価885件。
    朝井リョウさんのエッセイガチおもろいからみんな見て欲しい 肛門科行くことを「神秘の丸窓を開陳する」とか書いてあって大爆笑したから

朝井リョウ

そして誰もゆとらなくなった(文春文庫)

そして誰もゆとらなくなった(文春文庫)

腹痛との戦いから、結婚式の余興のやりすぎまで。身の回りの災難を笑いに変えるエッセイ集で、『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』と続いた「ゆとり三部作」はこれで完結です。2025年の文庫化にあたって、エッセイが2本書き足されています。

出版社
文藝春秋
刊行
2025年7月
仕様
文庫・384ページ
楽天評価
4.3/5(328件)
値段
定価 ¥825

『あえのがたり』|参加している、能登のチャリティ小説集

文芸書の棚には、朝井さんが参加しているチャリティ小説集もありました。話は、参加者のひとりの小川哲さんが最寄り駅を言っただけでマンションを当ててきて「めっちゃ怖かったです」という脱線へ。画面には筆文字で「小川哲さんがちょっと怖い」のテロップが出ていました。

朝井リョウ・小川哲・柚木麻子ほか

あえのがたり(講談社)

あえのがたり(講談社)

2024年の能登半島地震を受けて生まれた、応援チャリティの小説集です。朝井リョウさんを含む10人の作家が、1万字ずつの物語を寄せています。タイトルは、奥能登に伝わる田の神様の儀礼「あえのこと」から取られています。

出版社
講談社
刊行
2025年1月
仕様
単行本・224ページ
楽天評価
3.8/5(153件)
値段
定価 ¥2,200

『イン・ザ・メガチャーチ』|今この時代、人を動かすものは何なのか

動画が公開された2025年9月5日は、ちょうどこの新刊の発売日でした。作家生活15周年の記念作品で、メインの登場人物は3人。読んだ人がどの登場人物に自分を重ねるのか、「共感が一番集まるのは誰なのか?」を知りたい、と感想を募っていました。動画の締めのお知らせでは、ひと言でこう紹介しています。

朝井さん『イン・ザ・メガチャーチ』をひと言で

今この時代、人を動かすものは何なのか

この本はその後、2026年4月に本屋大賞を受賞しました。

朝井リョウ

イン・ザ・メガチャーチ(日経BP 日本経済新聞出版)

イン・ザ・メガチャーチ(日経BP 日本経済新聞出版)

アイドル運営に関わる男、癒やしを求める大学生、応援する俳優の報道に揺れる女。ファンダム経済を仕掛ける側と、のめり込む側、そして、かつてはまっていた側。3つの視点で「物語」が人を動かすことの光と影を描く長編です。2026年の本屋大賞を受賞しました。

出版社
日経BP 日本経済新聞出版
刊行
2025年9月
仕様
単行本・448ページ
楽天評価
4.3/5(3,330件)
値段
定価 ¥2,200

「覚悟」の正体と、西加奈子さんの名言

冒頭の「覚悟」の話は、ここで種明かしされます。書店は「最新の業界地図みたいなもの」で、行くと自分の本の存在が全くない時期もある。そういうときは、頑張らなきゃという気持ちと同時に、心が「ふぅ〜」となったりもする。そのうえで好きな言葉として挙げたのが、西加奈子さんの名言でした。

朝井さん西加奈子さんの名言として

書店の棚というのは、全員で作っているもの

みんなで良い棚をつくっていくと思えば、自分の本がたとえ置かれていなくても「励ましになるので…!!」。書店に行くとその言葉を思い出しながら、これからも楽しく巡りたい、と締めていました。

買い物の満足度も高かったようです。元々買おうと思っていたものが買えなかったこともあったけれど、そのぶん知らなかった本に出会えた。「場があってそこに行くという体験が今ちょっと減っているので」とも話していました。

こばんの台帳

今回の記録:2026年8月、朝井リョウさんの動画(34分24秒)を視聴。買った6冊と売り場で語っていた本を合わせて、31冊の書誌といま流通している版を確認した。 結論:34分24秒の視聴で、直木賞作家の「今気になる本」の棚がまるごと分かった。

備考:しゅりが気になっているのは『渇愛 頂き女子りりちゃん』と『アイスネルワイゼン』。朝井さんの本も読みたくなっている。

企画の1万円で買ったのは6冊。でも売り場で語られた本まで数えたら、31冊になりました。

朝井さんが選んだ本、気になった人は買ってみてください。

コメントの出どころ(出典1件)

引用したコメントは 【本気】朝井リョウが本屋で覚悟をみせる!?直木賞作家のお買い物に密着!!【本屋大賞2026 大賞】【本ツイ!】(YouTube・出版区)のコメント欄からです。高評価の数は2026年8月31日に取得した時点のもので、いまは増減している可能性があります。

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朝井リョウさんが1万円を手に本屋で買った6冊と、薦めた本まとめ(2025年・本ツイ!) | CelePick