恩田陸さんが三宅香帆さんのインタビューに答えた、平均1日1冊の読書と書き続ける理由|2人が挙げた『光の帝国』『修羅場の王』などの本
出典:TBS CROSS DIG with Bloomberg『Page Turners』
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23点
TBS CROSS DIG『Page Turners』で、文芸評論家の三宅香帆さんが小説家の恩田陸さんにインタビュー。読書と創作、本どうしのつながりを、話に出た23冊とともに紹介します。

本のことは、どこまで調べたの。

出版社の紹介と、いま買える版や値段も、1冊ずつ確かめました。
恩田さんの読書生活|平均1日1冊の習慣と、最後まで読む好奇心
恩田さんの読書量と本の選び方|ならすと1日1冊、本は本屋さんで
恩田さんは、ならすと1日1冊読んでいると話していました。本人によれば、2時間あれば1冊読めるそうです。

1日に1冊、しかも2時間で1冊って、すごすぎます!
恩田さんの話から
読む本と選び方
- 読むジャンル
- 小説・ノンフィクションなど、幅広く
- 買う場所
- 書店のみ
- 選び方
- 装丁やタイトルを見て、ピンときた本を買う。新聞広告もチェック
本の並べ方については、書店ごとに個性があって面白い、と恩田さん。
恩田さんは新書も読むそうです。執筆中に読む本として挙げたのは、ノンフィクションなど。
恩田さんがいつ、どう読むか|寝る前の1冊と、仕事の前に読みたくなる本
恩田さんの話から
普段の読書習慣
- 読む時間
- 昼の仕事と夕食を終えた、寝る前。締め切りに追われていなければ
- 紙か電子か
- 紙。電子書籍は仕事の校正刷り(ゲラ)のように感じる
新幹線でも、ちょうど1冊読めるそうです。
仕事の前ほど、読書が進む?
三宅さん
原稿を書かなきゃと思って読む本に、いちばん集中しているかも
机に向かって仕事をしなきゃと思いながら、本を読むこともよくある。
恩田さん
サボっている感じはするけれど、読書がはかどる
試験勉強の前になると、本を読みたくなるのと同じ。

やらないといけないことがあるときに違うことに集中しちゃうのは、人類あるあるなのかもしれません。
恩田さんの読書メモ|忘れないための記録には、不満も残る
読む速さに驚きましたが、恩田さんは、読んでから2年ほどたって文庫で読み返すと、犯人を忘れていることもあると話していました。
恩田さんの話から
忘れないための読書メモ
- 書くタイミング
- 読み終わった後
- 書くこと
- タイトル、著者、感想
ミステリーでは、犯人までメモに書き残すこともあると話していました。
最後に何か驚きがあるかもしれないと思って、途中で読むのをやめられないという恩田さん。期待した驚きがないまま終わり、メモに「金返せ!」と書くことも。読書メモには罵詈雑言も書いているので、人には見せられないと話していました。
三宅さんも、面白くない本への怒りを日記に長く書くそうです。恩田さんのエッセイにある「おもしろくない本にも怒らせてほしい」という言葉が好きだと話していました。

「金返せ!」って、同じ人間なんだなと思いました。笑
『修羅場の王』|恩田さんが最近読んで面白かった本
恩田さんが最近読んで面白かったというのが、倒産弁護士を追う『修羅場の王』。本には、債権者が大勢いるために弁護士が防弾チョッキを着て動いていた時期の話も出てくると紹介していました。
「JALの定期運行を維持するためにどうするかというところがおもしろくて
」
倒産しても、飛行機は飛ばし続けなければならない。その綱渡りのような状況を恩田さんはすごいと感じ、三宅さんはJALの話を現代のホラーと表現していました。
大西康之
修羅場の王 企業の死と再生を司る「倒産弁護士」142日の記録

2010年に会社更生法の適用を申請したJALは、2年8か月後に再上場を果たしました。その倒産と復活を陰で主導した倒産弁護士、瀬戸英雄さんを追ったノンフィクションです。瀬戸さん自身の証言を軸に、JALを法的整理に導き、再建への道を開くまでの142日を描きます。
- 出版社
- ダイヤモンド社
- 刊行
- 2025年10月
- 仕様
- 四六判・424ページ
- 楽天評価
- 4.6/5(19件)
- 値段
- 定価 ¥2,200
ここで挙がったもう1冊が、恩田さんが以前読んだ『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』。恩田さんの関心は、企業の再建から破綻の局面にも及んでいます。
恩田さんは、リーマン・ブラザーズの破綻が決まるまでの4日間ほどを描く本として紹介していました。
ビジネスや経済にはホラーに近いものがあり、そういう本が好きだとも話していました。
アンドリュー・ロス・ソーキン/加賀山卓朗 訳
リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上)(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

未曾有の金融危機が迫るなか、リーマン・ブラザーズのCEOや財務長官、FRB議長、ウォール街のトップたちは、何を考え、どう動いたのか。当事者たちの動きから金融危機の内幕に迫ったノンフィクションです。文庫は上下2冊で、こちらは上巻です。
- 出版社
- 早川書房
- 刊行
- 2014年2月
- 仕様
- 文庫・480ページ
- 楽天評価
- 4.2/5(21件)
- 値段
- 定価 ¥1,034
『作家で食っていく方法』|書く方法を探して、作家指南の本も読む
企業の実話だけでなく、恩田さんは作家指南の本も、だいたい読むそうです。最近読んだのは今村翔吾さんの『作家で食っていく方法』です。
恩田さんは、何かすばらしい方法がないかと期待して読むものの、人の方法は自分には当てはまらないといつも思うそうです。
今村翔吾
作家で食っていく方法(SB新書)

『羽州ぼろ鳶組』のシリーズや、直木賞を受けた『塞王の楯』の今村翔吾さんが、小説家という仕事の理想と現実を明かす新書です。人気作家であり続けるために何を考え、何をしているのかまで書いています。
- 出版社
- SBクリエイティブ
- 刊行
- 2026年1月
- 仕様
- 新書・216ページ
- 楽天評価
- 3.9/5(52件)
- 値段
- 定価 ¥1,045
恩田さんが挙げたもう1冊は、中山七里さんの『超合理的!ミステリーの書き方』。今村さんの本の職業としての作家論に加えて、こちらではプロットや人物づくりといった、創作の具体的な工夫に触れられます。
中山七里
超合理的!ミステリーの書き方(幻冬舎新書)

デビューしてから、3か月に1冊以上のペースで書き続けてきた中山七里さんが、その創作術を明かす新書です。プロットの立て方や登場人物の作り方、情報を明かす順番から、1日2食と決めるといった体の整え方まで語っています。
- 出版社
- 幻冬舎
- 刊行
- 2024年9月
- 仕様
- 新書・192ページ
- 楽天評価
- 3.9/5(34件)
- 値段
- 定価 ¥1,034
恩田作品から広がる読書|三宅さんの読む本と、読み書きへの向き合い方
三宅さんが恩田さんの作品から受け取ったのは、次に読む本との出会いと、読む・書くときに思い出す言葉でした。
三宅さんがエッセイで知ったのは、「殺気を持ってザッと読むんだ。」という読み方。大学院生になって論文をざっと読む訓練をするうちに、読むのが速くなった気がするそうです。
『ガラスの仮面』|小説のオマージュから、元の漫画へ
三宅さんは中学生のころ、漫画も多く読む恩田さんのエッセイに触れ、本も漫画も好きでいていいのだと感じたそうです。三宅さんも親御さんも、もともと萩尾望都さんの漫画が好きで、三宅さんは恩田さんを通じてさらに読み進めたといいます。

漫画ばかり読んでいると怒られるのに、本ばかり読んでいて怒られることってないですよね。漫画も本も同じように楽しむという考え方、素敵です。
きっかけ
恩田さんの小説
知ったもの
『ガラスの仮面』
元の漫画も実際に読んだ、と三宅さん。
美内すずえ
ガラスの仮面 1(花とゆめコミックス)

少女・北島マヤが、演劇にすべてを懸けてひたむきに生きる姿を描いた、美内すずえさんの少女漫画です。1976年に1巻が出た長い物語で、単行本は49巻まで出ています。こちらはその1巻です。
- 出版社
- 白泉社
- 刊行
- 1976年3月
- 仕様
- 新書判・192ページ
- 楽天評価
- 4.3/5(72件)
- 値段
- 定価 ¥528
きっかけ
恩田さんのエッセイ
知ったもの
『ジョジョの奇妙な冒険』
荒木飛呂彦
ジョジョの奇妙な冒険 1(ジャンプコミックス)

19世紀末のイギリス。貴族のジョースター卿は恩人の息子ディオを養子に迎えますが、ディオは実の息子ジョナサン、通称ジョジョを追い落として財産を奪おうとし、石仮面を使ってジョジョの命を狙います。荒木飛呂彦さんの漫画の1巻です。
- 出版社
- 集英社
- 刊行
- 1987年8月
- 仕様
- 新書判・192ページ
- 楽天評価
- 4.6/5(132件)
- 値段
- 定価 ¥572
『月曜日は水玉の犬』|原稿が進まないとき、三宅さんが手に取るエッセイ
三宅さんが挙げたのは、『月曜日は水玉の犬』とイギリス旅行のエッセイ。
書くために、本を読む
恩田さん
指南書に、方法を探す
自分にも使える書き方を期待して読む。ただ、人の方法は自分には当てはまらないといつも思う。
三宅さん
恩田さんのエッセイで、書く気持ちに
原稿が進まないときに読むと、自分も原稿を書こうという気になる。
恩田陸
月曜日は水玉の犬

小説や映画など、恩田陸さんが味わってきたエンターテインメントについて書いたエッセイ集です。「半歩遅れの読書術」や、谷崎潤一郎について書いた一編などを収めています。『土曜日は灰色の馬』『日曜日は青い蜥蜴』に続く、曜日の名前が付いたエッセイ集の3冊目です。
- 出版社
- 筑摩書房
- 刊行
- 2022年3月
- 仕様
- 四六判・256ページ
- 楽天評価
- 3.9/5(23件)
- 値段
- 定価 ¥1,870
『坂の上の雲』|社会人になった三宅さんが思い出した、恩田さんの読書体験
読むきっかけだけでなく、読めない時期のことも、エッセイを通じて三宅さんに残っていました。三宅さんが社会人になって折に触れ思い出したのは、恩田さんが書いた、本を読めないつらさだったそうです。
三宅さんが書名を挙げずに紹介したエッセイには、恩田さんが会社員時代に本を読む時間がなくてつらかったことと、『坂の上の雲』の一気読みで、久しぶりに本を読んだと思えた体験が書かれているそうです。この対談でも恩田さんは、本が読めなくて会社を辞めたと話していました。
司馬遼太郎
新装版 坂の上の雲 一(文春文庫)

明治維新を経て、先進国に追いつこうと急ぐ日本。松山出身の秋山好古・真之の兄弟と正岡子規の3人を中心に、明治という高揚の時代を生きた人々を描く長編小説です。文春文庫の新装版は全8巻で、こちらは1巻です。
- 出版社
- 文藝春秋
- 刊行
- 1999年1月
- 仕様
- 文庫・352ページ
- 楽天評価
- 4.3/5(695件)
- 値段
- 定価 ¥825
恩田作品をどこから読むか|三宅さんが薦める短編・旅・笑い
三宅さんは中学生のころから恩田作品を読み、ホラー、SF、ミステリー、古典など、さまざまなジャンルへ関心を広げてきたそうです。
「人生で一番価値観に影響を与えられたのは恩田先生
」
初めて読む人への話では、有名な長編の『夜のピクニック』『蜜蜂と遠雷』に加え、短編の読みやすさ、旅の気分、笑いといった入口が挙がりました。同じ本でも、薦める読者と書いた本人の見方は、ときに違います。
『光の帝国』|三宅さんがいちばん好きな短編から入る
三宅さんは恩田作品では短編が好きで、いちばん好きなのが、ごく初期の『光の帝国』だと話していました。不思議な力を持つ常野の人たちを、さまざまな立場から描く短編が集まった本です。
恩田さんは、『光の帝国』を兼業時代に、昔読んだ作品へのオマージュとして書いたと話していました。
三宅さん
こんな人に
- 向く:本を久しぶりに読む人
- 向く:読書にあまり慣れていない人(1つ1つの話が短い)
オマージュにしたのは、ゼナ・ヘンダースンさんの「ピープル」シリーズ。恩田さんは、自作を気に入ったら元の作品も読んでほしいと話していました。
三宅さんによると、恩田さんはオマージュにした作品をあとがきなどで紹介してくれるそうです。その紹介をきっかけに、三宅さんも「ピープル」シリーズを読んだと話していました。
恩田陸
光の帝国 常野物語(集英社文庫)

人を見通し、癒し、守る不思議な力を持ちながら、権力を求めずに穏やかに暮らしてきた常野の一族。その力はいったい何のためにあるのか。一族の人々をめぐるファンタジーです。文庫の解説は久美沙織さんが書いています。
- 出版社
- 集英社
- 刊行
- 2000年9月
- 仕様
- 文庫・288ページ
- 楽天評価
- 4.1/5(876件)
- 値段
- 定価 ¥792
動画とは表紙の絵が異なりますが、同じ集英社文庫の『光の帝国 常野物語』です。ここでは購入リンク先の書影を載せています。
『光の帝国』と同じ「常野物語」シリーズには、ほかに『蒲公英草紙』『エンド・ゲーム』があります。
『黒と茶の幻想』|旅行気分で読む三宅さんと、書き心地を覚えている恩田さん
男女4人の屋久島旅行を描く『黒と茶の幻想』。同じお気に入りでも、三宅さんと恩田さんでは理由が違います。
『黒と茶の幻想』の好きなところ
三宅さん
読む側:旅をしている気分に
最近あまり本を読んでいない人にも薦めたい。屋久島へ行く前に読むのもよさそう。
恩田さん
書く側:苦労せずに書けた
最初から最後までほぼ同じ速度で書けた、珍しい小説。自作のなかでもお気に入り。
ただし、初心者への推薦には、恩田さんは「そうですかね?初心者にこれ・・」とためらいも。屋久島への旅行前に読むことを薦めた三宅さんは、「ちょっと怖い屋久島ですけど」とも付け加えていました。
恩田陸
黒と茶の幻想(上)(講談社文庫)

学生時代の同級生だった男女4人が、太古の森を抱く島へ向かい、消息を絶った共通の知人の記憶をたどる長編です。4人それぞれの名を題にした4部構成で、2001年の単行本を文庫の上下2冊に分けたもの。上巻には第一部・第二部が入り、第三部・第四部は下巻に続きます。
- 出版社
- 講談社
- 刊行
- 2006年4月
- 仕様
- 文庫・400ページ
- 楽天評価
- 4.1/5(216件)
- 値段
- 定価 ¥858
『木曜組曲』|『黒と茶の幻想』を読んだあとに、三宅さんが薦める本
『黒と茶の幻想』の大人の会話が好きだという三宅さんが、その次に薦めたのが『木曜組曲』です。こちらで挙げたよさも雑談で、2冊には登場人物の会話を楽しむつながりがあります。
恩田さんも雑談を書くのが好きだと話していました。三宅さんは、パスタを作るのが好きだという男性を信用しない、という作中の話を挙げ、中学生のころに、そうなんだと思ったと話していました。
恩田陸
木曜組曲〈新装版〉(徳間文庫)

耽美派の大家だった作家、重松時子が薬物で亡くなって4年。時子にゆかりの深い5人の女性が、今年もうぐいす館で彼女を偲びます。ところが謎のメッセージを境に、なごやかだった会話は告発と告白へ変わっていきます。時子の死は自殺だったのか、それとも他殺だったのか。
- 出版社
- 徳間書店
- 刊行
- 2019年2月
- 仕様
- 文庫・272ページ
- 楽天評価
- 3.9/5(79件)
- 値段
- 定価 ¥715
『ドミノ』|笑いから入る案には、恩田さんもうなずく
旅や会話とは別の入口が、笑いです。東京駅で見知らぬ人どうしの人生が交錯する『ドミノ』について、三宅さんはこんな驚きを話していました。
「小説でこんなに笑うってことあるんだ!
」
『黒と茶の幻想』の初心者推薦にはためらった恩田さんも、こちらは笑えるものから入る手があるかもしれない、と応じています。薦める本によって、恩田さんの反応も違いました。
三宅さんは地元にいるころに読み、初めて東京駅を訪れたときには、作品の舞台に来たことに感動したそうです。
恩田陸
ドミノ(角川文庫)

互いを知らない人たちが、昼下がりの東京駅ですれ違います。1億円の契約書を待つ生命保険会社の社員たちも、別れを企てる青年実業家も、その一瞬から、倒れていくドミノのように思いがけない事態に巻き込まれていきます。
- 出版社
- KADOKAWA
- 刊行
- 2004年1月
- 仕様
- 文庫・384ページ
- 楽天評価
- 3.9/5(1,067件)
- 値段
- 定価 ¥968
『ユージニア』|三宅さんが海外でも伝わると考えた、事件の怖さ
笑いの『ドミノ』から一転して、『ユージニア』で話題になったのは怖さ。大量毒殺事件を関係者の証言で組み立て直す長編ミステリーです。
三宅さんは、海外でもよく売れていると聞くと話し、時代に左右されにくい普遍的な恐怖があるのではないか、と考えていました。恩田さんも、どこの土地にもこういうことがありそうだと応じています。
動画で手にしていたのは、2025年刊行の『完全版 ユージニア』です。
恩田陸
完全版 ユージニア

数十年前の夏、青澤家の米寿の祝いの席で17人が毒殺され、事件はある男の遺書で一応の決着を見ました。関係者の証言から、年月を経て事件を組み立て直す長編ミステリーで、第59回日本推理作家協会賞を受けています。透けるカバーや凹凸のある表紙など、本の造りにも工夫を凝らした、外箱入りの限定生産版です。
- 出版社
- KADOKAWA
- 刊行
- 2025年10月
- 仕様
- 四六判・460ページ
- 値段
- 定価 ¥6,050
児童小説で出会った驚き|作者の存在と、よい子ではない主人公
『チョコレート工場の秘密』|恩田さんが初めて「作者」を意識した本
恩田さんが最初にはまったという本が『チョコレート工場の秘密』。この本で初めて、小説には作者がいると知ったことが衝撃だったと話していました。
「初めて小説に作者がいることを認識した
」
恩田さんは、それまでは本が自然にできるように思っていて、「作・絵」の「作」も分かっていなかったそうです。後ろの解説で、この本を書いたのはロアルド・ダールさんという方だと知ったといいます。
ロアルド・ダール 作/クェンティン・ブレイク 絵/柳瀬尚紀 訳
チョコレート工場の秘密(ロアルド・ダールコレクション 2)

働く人の姿を誰も見たことがない、謎のチョコレート工場。そこに5人の子どもが招かれることになりました。招待状が入ったチョコレートは、世界にたった5枚。1年に1度、誕生日にしかチョコレートを食べられない貧しい少年チャーリーにも、機会は巡ってくるのでしょうか。
- 出版社
- 評論社
- 刊行
- 2005年4月
- 仕様
- 単行本・269ページ
- 楽天評価
- 4.3/5(342件)
- 値段
- 定価 ¥1,320
『クローディアの秘密』|性格が悪くても共感できた主人公
三宅さんが小学生のころに好きだった『クローディアの秘密』では、美術館への家出とともに、姉の性格が印象に残ったそうです。
「児童小説の主人公ってこんなに性格が悪くてもいいんだ
」
弟に毒を吐くような主人公にも共感できることが、三宅さんには驚きだったそうです。同じ主人公の性格の話で、恩田さんが挙げたのは『秘密の花園』でした。
E.L.カニグズバーグ 作/松永ふみ子 訳
クローディアの秘密(岩波少年文庫 050)

家出を決めた少女クローディアが、弟を連れて向かったのは、ニューヨークのメトロポリタン美術館でした。2人はそこで、ミケランジェロの作品ではないかといわれる天使の像に心をひかれ、その謎を追いかけていきます。
- 出版社
- 岩波書店
- 刊行
- 2000年6月
- 仕様
- 岩波少年文庫・242ページ
- 楽天評価
- 4.2/5(167件)
- 値段
- 定価 ¥836
恩田さんは『秘密の花園』のヒロインの性格の悪さに驚き、後半でいい子になってくると少しつまらないと感じたそうです。二人にとって、素直でよい子とは限らない主人公も、物語を読む面白さになっていました。
動画で挙がった『秘密の花園』は、畔柳和代さん訳の新潮文庫です。
フランシス・ホジソン・バーネット 著/畔柳和代 訳
秘密の花園(新潮文庫)

10歳で両親を失い、親戚の屋敷に引き取られたメアリ。愛想のない少女が夢中になったのは、人知れず閉ざされていた庭でした。自然に親しんで育った少年ディコンに導かれ、いとこのコリンも一緒に、メアリは庭の世話を始めます。
- 出版社
- 新潮社
- 刊行
- 2016年5月
- 仕様
- 文庫・448ページ
- 楽天評価
- 4.4/5(53件)
- 値段
- 定価 ¥990

小説で登場するのが、理想的な人物ばかりより、ちょっと悪いところがある人物がいた方が面白いの、なんかわかる気がします。
恩田さんが読む三宅さんの評論|作品の読み方から、生活への提案まで
恩田作品を読んできた三宅さんは、ご自身も本を書いています。対談では、三宅さんによる作品の読み解き方や、本の中で示す具体的な提案について、恩田さんが読者として感想を話していました。
『娘が母を殺すには?』|漫画と小説を横断する、母と娘の読み方
三宅さんの印象を聞かれた恩田さんが、好きな本として挙げたのが『娘が母を殺すには?』。対談の前夜にも読み返したそうです。この本には漫画も小説も数多く登場することに触れながら、三宅さんのようにいろいろな読み方をする人が現れたことを面白いと話していました。
書名の「殺す」は比喩です。まえがきによると、多くの物語は、息子が大人になるときの「父殺し」を描いてきたといいます。この本は、娘も精神的な意味で「母殺し」をする必要があるのではないか、と述べています。
三宅さんは、少女漫画でも長く扱われてきた母と娘の問題に、ずっと関心があったそうです。本を出すと、男性から、その関係に問題があることすら初めて知ったというコメントも届いたといいます。
作者にとって長く考えてきた題材が、読者によっては初めて知る問題でもあるということですね。
三宅香帆
娘が母を殺すには?

「毒母」や「母が重い」といった母と娘の葛藤は、小説や漫画、ドラマ、映画のなかで繰り返し描かれてきました。そうした母と娘の物語を読み解き、母娘の問題へのひとつの答えとして、精神的な意味での「母殺し」の具体的な方法を示す文芸評論です。
- 出版社
- PLANETS/第二次惑星開発委員会
- 刊行
- 2024年5月
- 仕様
- 四六判・224ページ
- 値段
- 定価 ¥2,420/Kindle ¥2,420
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』|労働と読書の歴史をたどる三宅さんの本
分析の先に、具体的な提案も
恩田さん
どうすればよいかまで、提案しているのがいい
三宅さんの本全般についての評価。具体的で実践的なところに感心。
三宅さん
恩田さんの言葉に、勇気づけられた
この本の最後にも、読むコツを載せている。具体的に書くと軽薄だと言われることもあるけれど、恩田さんが具体的で実践的なところを評価してくれて、勇気づけられた。
『坂の上の雲』の節で触れた、恩田さんの会社員時代の話には、本を読む時間がないつらさがありました。三宅さんの本は、働くことと読書の関係を歴史からたどり、読むための提案もする一冊です。
三宅香帆
なぜ働いていると本が読めなくなるのか(集英社新書)

働いていると、なぜ本が読めなくなるのか。兼業で執筆をしてきた三宅さんが、明治から2010年代までの労働と読書の歴史をたどり、日本人の仕事と読書の関係がどう変わってきたか、そこから見える日本の労働の問題を探ります。あとがきの題は「働きながら本を読むコツをお伝えします」です。
- 出版社
- 集英社
- 刊行
- 2024年4月
- 仕様
- 新書・288ページ
- 楽天評価
- 3.8/5(1,551件)
- 値段
- 定価 ¥1,100
恩田さんが書き続ける理由|読者をがっかりさせず、まだ書いたことのないものへ
「意地です
」
恩田さんは子どものころ、多作な作家の後期作品を読んで、つまらなくなったと感じ、がっかりしたことがあるそうです。自分はそうしたくない、というのが書き続ける意地だといいます。
書きたくない日も、仕事をしたくない日も、とても多い。それでも書き続ける限りは読者をがっかりさせたくない、と恩田さんは話していました。

意地で書いていることも、がっかりさせたくないという気持ちも、さらっと言っていましたが、すごくかっこいいと思いました。書くことに対する思いを感じる言葉でした。
『六番目の小夜子』|応募原稿を上下に分けて送った、デビュー作
書き続ける前の出発点にあるのが、会社を辞めるときに応募した『六番目の小夜子』。恩田さんによれば、取り憑かれたように書き、下書きを原稿用紙へ清書していたそうです。
締め切りが迫っていたため、応募原稿を上下巻に分け、上巻だけを締め切りに間に合うように送り、下巻は数日遅れて送ったと話していました。この作品は第3回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補に残り、受賞は逃したものの本になりました。
恩田陸
六番目の小夜子(新潮文庫)

とある地方の高校には、3年に一度「サヨコ」と呼ばれる生徒が選ばれる奇妙なゲームが、十数年にわたって受け継がれていました。今年は「六番目のサヨコ」が生まれる年。そこへ、謎めいた転校生の津村沙世子がやってきます。恩田陸さんのデビュー作です。
- 出版社
- 新潮社
- 刊行
- 2001年1月
- 仕様
- 文庫・352ページ
- 楽天評価
- 3.6/5(1,055件)
- 値段
- 定価 ¥737
『蜜蜂と遠雷』|書く苦労を見せず、一気に読んでもらうために
三宅さんは、この長い小説にも、一気読みしたという感想は多いのではないかと話していました。恩田さんは、ページをめくる手が止まらない「ページターナー」を目指しているそうです。
恩田陸
蜜蜂と遠雷(上)(幻冬舎文庫)

近年、優勝者が音楽界の寵児になっていく芳ヶ江国際ピアノコンクール。家に楽器のない16歳の風間塵、母の死以来弾けなくなったかつての天才少女・栄伝亜夜、楽器店に勤める28歳の高島明石、優勝候補のマサルが挑みます。直木賞と本屋大賞を受けた長編です。文庫は上下2冊で、こちらは上巻です。
- 出版社
- 幻冬舎
- 刊行
- 2019年4月
- 仕様
- 文庫・456ページ
- 楽天評価
- 4.4/5(728件)
- 値段
- 定価 ¥924
動画で挿入される書影は単行本ですが、ここでは同じ作品の文庫版の上巻を紹介しています。
恩田さんは、始めと終わりがはっきりした、時間が限られる話が好きだから舞台をコンクールにしたと話していました。
ピアノコンクールを描くこの小説で、演奏の音をどう文章にするか、恩田さんは毎回試行錯誤したと話していました。読者には書く苦労を感じさせず、するっと読んでもらいたいそうです。
「これを読んでコンサートとかライブに行ったというのがうれしかった
」
『spring』|音楽の次に挑んだ踊りと、バレエを支える人たち
恩田さんは『蜜蜂と遠雷』より難しいものなら次は踊りか、と考えていたところ、編集者さんからバレエの提案を受けて本格的に取材を始めたそうです。構想から約10年をかけ、執筆中も取材を続けたといいます。
恩田さんは、やったことのないことをやるよう心がけていると話していました。

やったことのないことをやろう、という心がけも、すごく素敵だと思いました。
踊る本人も言葉にできない感覚を、文章にする
バレリーナや振付家の視点は「妄想力」で書いたという恩田さん。取材相手の演出振付家・舞踊家の金森穣さんは、物事を明晰に言語化して説明してくれる人ですが、踊っているときのことだけは言語化できないと話したそうです。
「言語化できないものを言語化するのが私の商売だな。
」
時間を行き来して、踊る人の周囲も描く
恩田さんが話した、2作の描き方の違いです。
蜜蜂と遠雷
始まりと終わりがはっきりしたコンクール。限られた時間の物語。
spring
時間を行き来しながら、家族やスタッフも含め、バレエそのものを描く。
三宅さんには、これまでのバレエ漫画は「男の子のバレエ漫画」か「女の子のバレエ漫画」に分かれていた気がするそうです。『spring』ではジェンダーにとらわれず、いろいろな子が踊りをどう考えるかが読めるのが新鮮だったと話していました。
恩田陸
spring

8歳でバレエに出会い、15歳で海を渡った萬春(よろず・はる)。同じ時代に巡り合った、踊る者、作る者、見る者、奏でる者の目を通して、1人の天才の姿が浮かび上がっていきます。構想と執筆に10年をかけたバレエ小説で、2025年の本屋大賞では6位でした。
- 出版社
- 筑摩書房
- 刊行
- 2024年3月
- 仕様
- 四六判・448ページ
- 楽天評価
- 3.6/5(604件)
- 値段
- 定価 ¥1,980
恩田さんがいつも書きたいというのは、いろいろな才能です。ダンサーのように目に見える才能だけでなく、教える、育てる、批評する、助言する、チームで発揮する才能もあり、『spring』では周りの人たちも書けたのではないかと話していました。
『spring another season』|本編の周りにいた人たちの物語も、一冊に
『spring』で踊る人の周囲にも広がった視点は、スピンオフの話にもつながります。三宅さんは12編もの収録に驚き、本編では端のほうにいた人たちが登場することを喜んでいました。
恩田さんは、連載中から、本編には出せなくても書きたい話を書きためていたそうです。頼まれずにスピンオフを書いたのは初めてで、すでに原稿があったので間を置かずに出せたと話しています。
恩田陸
spring another season

『spring』の本編で描ききれなかった舞台裏と、萬春自身や仲間のダンサー、師匠たちの過去と未来を描く、全12章のスピンオフです。書き下ろしの中編「石の花」や、『spring』の刊行時に期間を限って公開された「反省と改善」も収めています。
- 出版社
- 筑摩書房
- 刊行
- 2025年12月
- 仕様
- 四六判・256ページ
- 楽天評価
- 3.6/5(94件)
- 値段
- 定価 ¥1,760
『夜のピクニック』|書店員さんが選ぶ賞を受けた、最初の喜びと2度目の驚き
読者をがっかりさせたくないという話に加え、恩田さんは、書店員さんたちから評価された喜びも語っています。高校の歩行祭を描いた『夜のピクニック』は、2005年の第2回本屋大賞を受けた作品です。
恩田さんにとって本屋大賞は、最初に受賞が決まった賞で、勲章のようなものだそうです。文学賞の候補になっても取れずにいたなか、本屋さんが手作りで育てた賞をもらえたことがうれしかったと話していました。
恩田陸
夜のピクニック(新潮文庫)

全校生徒が夜通し80キロを歩き通す、北高の伝統行事「歩行祭」。高校生活最後の歩行祭に、甲田貴子は、ひそかな誓いと小さな賭けを胸に、親友たちと歩き出します。第2回本屋大賞と吉川英治文学新人賞を受けた長編です。
- 出版社
- 新潮社
- 刊行
- 2006年9月
- 仕様
- 文庫・464ページ
- 楽天評価
- 4.1/5(2,978件)
- 値段
- 定価 ¥880
そこから『蜜蜂と遠雷』につながるのは、本屋大賞での2度目の受賞。2017年には、もう一度もらえることにも、直木賞と本屋大賞が同じ作品を選んだことにも驚き、とてもうれしかったそうです。
今回の記録:2026年9月、三宅香帆さんが恩田陸さんにインタビューした回(41分)を視聴。記事に載せた23冊を1冊ずつ調べた。 結論:出版社による本の紹介と、いま買える版・値段・購入先が分かった。
三宅さんがすごく楽しそうで、見ていて幸せになりました。作品のことだけでなく、恩田さんの人間的なところも知れて、いい対談でした。
気になった本があったら、買ってみてください。
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