三宅香帆さんと竹下隆一郎さんが3人ずつ選ぶ日本文学史の最重要作家と、紹介された本15冊|紫式部・有吉佐和子・夏目漱石から漫画『日出処の天子』まで
出典:TBS CROSS DIG with Bloomberg『Page Turners』
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この記事に出てくるもの
15点
『Page Turners』は、文芸評論家の三宅香帆さんと、ハフポスト日本版の元編集長でいまはTBSテレビの竹下隆一郎さんが、その月に読んだ本を持ち寄るYouTubeの番組です。2026年6月21日公開の回はいつもと違う文学史の特集で、日本文学史で大事だと思う作家を、三宅さんと竹下さんがそれぞれ3人ずつ挙げていました。

本は何冊出てきたの。

紹介された本は15冊。全部並べて、いまいくらで買えるかを確かめました。
この回のきっかけになった『ニュー日本文学史』
『ニュー日本文学史』|新しいことをした作家は、いつも怒られてきた
特集のきっかけは三宅さんの新刊『ニュー日本文学史』で、竹下さんは、その「はじめに」に「痺れました」と話していました。
新しいと、怒られる。
竹下さんによると、この「はじめに」には、日本の作家はいつも新しいことをしては怒られてきた人たちだと書いてあって、その見方ひとつで、この本に出てくる紫式部も夏目漱石も森鴎外も、続けて面白く読めたそうです。
竹下さん
こんな人に
- 向く:本や小説に、ふだん興味がない人も(誰にでも何か怒られた経験はあるので、読んでいて面白い)
この本は、三宅さんが月刊誌『なごみ』で2年間続けた連載をまとめたものです。もとは紫式部の作品や『方丈記』『おくのほそ道』などのどこが面白いのかを書く連載でしたが、書いているうちに、どの回も新しいことをして怒られた作家の話になっていると気づき、日本の文学史は怒られとともにある、と思いながらこの本を書いたそうです。目次を見ると、たとえば『方丈記』の章には「『厄難を書く』ことが非常識だった時代に、あえてそれを記した貴重な災害文学」という小見出しが付いています。
三宅さんは、教科書に載っている人は遠く感じるけれど、読んでみると今もあるあるだと思うことが多い、とも話していて、たとえば授業で「ゆく川の流れは絶えずして」と習う『方丈記』は、三宅さんに言わせると「断捨離したお坊ちゃんのタワマン文学」。タワマン文学は、タワーマンションの何階に住んでいるかといった自意識を書く、SNSから広まった文章のことです。『方丈記』を書いた鴨長明は神職の家の生まれで、のちに3メートル四方ほどの庵で暮らし、都の人たちが屋根の高さを競うように家を建てて財産をつぎ込むのを、つまらないことだと書きました。
この本で竹下さんがもう1つ面白かったと挙げていたのは、この本が漱石を、ボケ中心だった日本文学にツッコミを入れた人として書いているところです。何がボケで何がツッコミなのかは、三宅さんがこう説明していました。
ボケ:内面を吐露する小説
- 近代文学は、自分の内面を告白する・吐露するものとして始まった
- 田山花袋の『蒲団』もそうで、人に言えないような自分のことまで書いてしまうのが小説だ、というところから始まった
ツッコミ:漱石の『吾輩は猫である』
- ほかの作家より一足早くイギリス文学を学んでいた漱石は、小説をもう少し俯瞰して見ていた
- 猫の目線から人間を書いた。内面をああだこうだ言う人間が、猫から見ると「また何かやってら」という感じに見える
- 吐露している人間には、ツッコミを入れるくらいがちょうどいいのでは、と考えて小説を書いた
「こんな国語の授業があったらいいなと思った
」

『ニュー日本文学史』、気になります!日本文学史って、授業で聞いた少し退屈なイメージだったんです。でも漱石はツッコミ、という三宅さんの説明が分かりやすくて、この本も読みたいと思いました。
三宅香帆
ニュー日本文学史

『土佐日記』から『吾輩は猫である』まで、平安から明治までの作品を25の章で読み直します。男装した姫君が透明人間になる『有明の別れ』や、異世界転生のような展開の『浜松中納言物語』も取り上げています。巻末には、日本文学の主要作品の年表が付きます。
- 出版社
- 淡交社
- 刊行
- 2026年3月
- 仕様
- 四六判・240ページ
- 楽天評価
- 4.0/5(32件)
- 値段
- 定価 ¥1,870
三宅さんの1人目は、紫式部
『紫式部日記』|源氏物語が、孤独だった人生から湧き出てきたものだと分かる
『源氏物語』の作者の紫式部を、三宅さんは『ニュー日本文学史』を書いて、あらためて本当に偉大だと思ったそうです。1000年代に女性が内面を書き、政治劇も書いて、人の一生を長編で書き切ったこと自体が、世界的に見てもありえない、と。
女性が自分の言葉で書く、今に続くひらがなの文体も、元祖は紫式部だそうです。それまで物語は女性や子どもが読むものと思われていたけれど、紫式部は漢文の知識があったので、漢文を踏まえた表現を入れて、男性にもこれはすごいと感じさせた、とも話していました。
『紫式部日記』を読むと、『源氏物語』が、教養はあったけれど色々と孤独だった紫式部自身の人生から湧き出てきたものだと、しみじみよく分かる、と三宅さんは続けていました。
紫式部/山本淳子 編
紫式部日記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典(角川ソフィア文庫)

一条天皇の中宮・彰子に仕えていた紫式部が、宮廷での日々を記した日記です。華やかな暮らしになじめない自分の心の内から、同僚の女房たち、清少納言への評価まで。現代語訳に寸評とコラムを添えていて、『源氏物語』が生まれた背景を知る入門にもなる1冊です。
- 出版社
- KADOKAWA
- 刊行
- 2009年4月
- 仕様
- 文庫・274ページ
- 楽天評価
- 4.3/5(30件)
- 値段
- 定価 ¥836
『あさきゆめみし』|源氏物語の入り口に、三宅さんが真っ先に挙げた漫画
三宅さんによると、源氏物語は今読んでも面白くて、登場人物に、今もこういう人いるな、と思えるそうです。読み返すたびに、自分の年齢によって好きなヒロインが変わるのも面白いそうです。昔好きだったのは、幼なじみとの恋が少しずつ倦怠期に入っていく雲居の雁という姫君。最近は朧月夜という姫君で、光源氏と出会う「花宴」の巻の場面がとてもきれいだ、と話していました。
竹下さんは、紫式部が主人公の大河ドラマ『光る君へ』などで源氏物語に興味を持っても、ハードルが高いイメージがある、そういう人は何から入るのがいいのか、と聞いていました。三宅さんが答えたのは漫画でした。
「私は漫画の『あさきゆめみし』ではと結局思う
」
大和和紀さんが美しい絵で、なんて分かりやすいんだというくらい分かりやすく、源氏物語を面白く描いている、と三宅さん。

源氏物語って授業的なイメージがあって、なかなか読まないんですよね。でも漫画なら読めそうです。漫画で内容を理解してから、本で深めるのも良さそうです。
大和和紀
あさきゆめみし 完全版1

光源氏が恋に落ちたのは、父である帝の妃で、義理の母にあたる藤壺の宮でした。その許されない恋から始まる源氏物語を、大和和紀さんが漫画にした作品です。講談社の完全版(全10巻)の1巻で、ハードカバーで出ています。
- 出版社
- 講談社
- 刊行
- 2017年2月
- 仕様
- A5判・274ページ
- 楽天評価
- 4.3/5(13件)
- 値段
- 定価 ¥2,200
『30日de源氏物語』|1日1章で源氏物語をつかむ、三宅さんの入門書
入り口は、三宅さんがほかにも3つ挙げていました。ドラマの『光る君へ』から入ること、田辺聖子さんがダイジェストで書いた小説から入って原文へ進むこと、現代語訳で全部読むことです。竹下さんは、概要も大事だけれど細かいところが面白くて、あらすじを知っただけでは読んだことにならない本だ、と受けていました。
三宅さんは最後に、自分の本も入り口の1つに加えていました。1冊で源氏物語が分かる本を書いているので、よければそれを、と。

『30日de源氏物語』も良さそうです。三宅さんなら、親しみやすく、分かりやすく書いてくれていそうです。
三宅香帆
30日de源氏物語

1日1章、30日で源氏物語のおおよそがつかめるように組んだ入門書です。紫式部はなぜこの物語を書いたのか、伏線はどう読めばいいのか、平安の人は何を考えていたのか。三角関係や和歌、うわさの速さなど、章ごとに切り口を変えて、話のどこが面白いのかを案内します。
- 出版社
- 亜紀書房
- 刊行
- 2024年6月
- 仕様
- 四六判変型・384ページ
- 楽天評価
- 4.2/5(32件)
- 値段
- 定価 ¥2,200
竹下さんの1人目は、有吉佐和子
『プレミアムカラー国語便覧』|まず便覧で、有吉佐和子の位置を確かめる
迷ったうえで有吉佐和子を選んだ竹下さんが、まず持ってきたのがこの国語便覧でした。三宅さんと日本文学を話すのはプレッシャーなので、まず便覧で、話すことが合っているかを確かめる、と。有吉佐和子は、『恍惚の人』や、次に紹介する『複合汚染』で知られる昭和の小説家です。
竹下さんは有吉佐和子を重要な作家だと思っているのに、この便覧ではそれほど大きく扱われていなかったそうです。ベストセラー作家でもある有吉佐和子を、文学史のなかでどう位置づけるのか。竹下さんは、そこから話を始めていました。
足立直子・二宮美那子・本廣陽子・森田貴之 監修
改訂版 プレミアムカラー国語便覧

高校の国語の教科書と一緒に使う資料集で、教科書に載る作家を網羅し、なかでも定番の作家と作品に多くのページを割いています。巻頭特集は「恋愛」や「お金・給料」といった身近な切り口。文学関係図や近現代作家の比較、源氏物語のまとめのページもあり、NHK for Schoolの動画はQRコードから見られます。
- 出版社
- 数研出版
- 刊行
- 2024年2月
- 仕様
- B5判・520ページ
- 楽天評価
- 4.8/5(37件)
- 値段
- 定価 ¥990
『複合汚染』|ストーリーのない、「破綻している」小説
竹下さんはこれを「破綻している小説」と紹介していました。環境問題を書いた作品で、1974〜75年に朝日新聞で連載されました。竹下さんによると、農薬による環境汚染を指摘したレイチェル・カーソンの『沈黙の春』を意識して書かれているそうです。
竹下さんによると、この小説には、現代科学のよくないところや農作物の問題点が書かれているそうです。有吉佐和子は小説家として花鳥風月、つまり自然を大事にしているので、その自然が汚されていることを告発している、と。
破綻しているところとして挙げていたのは、政治家の市川房枝の選挙の話から始まり、当選するのかと読ませたと思ったらピタッと終わって、いきなり環境問題の話がずっと続くこと。プロットも無く、主人公らしい主人公もいなくて、データも書いてあり、報告書なのかフィクションなのか記事なのか分からない、と話していました。
「破綻している そこが面白い
」
ストーリーがないのに読んでしまうのは、有吉佐和子がその時代を語るのがうまい作家だから、とも竹下さん。破綻と言ったのはいい意味で、つかみ取った時代の問題をとにかく文章にぶつけていて、筋書きに収まりきらなくなっている、とあとで言い添えていました。
有吉佐和子
複合汚染(新潮文庫)

工業廃液や合成洗剤で汚れる川、化学肥料と除草剤で荒れる土。いくつもの毒性物質が重なって起きる汚染を、小説家の直感と幅広い調査で書いた作品です。有害な物質が食べ物を通して体にたまり、これから生まれる子どもにまで及ぶ問題を、そのまま読者の前に置きます。
- 出版社
- 新潮社
- 刊行
- 1979年5月
- 仕様
- 文庫・624ページ
- 楽天評価
- 4.4/5(67件)
- 値段
- 定価 ¥1,100
『青い壺』|半世紀前の小説が、2025年上半期の文庫ランキングで1位に
『青い壺』は、何十年も前の本なのに2025年の文庫ランキングで1位になって話題になるくらい現代的だ、と竹下さん。
青い壺が色々な人の手に渡っていく小説で、竹下さんが例に挙げたのは、定年退職した男性が、世話になった上司に壺を渡しに、久しぶりに会社へ行く話です。定年したのにやることがない、そういう人の姿が書かれているそうです。
竹下さんによると、文学の役割は、時代の移り変わりや、そのなかで生まれるひずみを描くこと。有吉佐和子が書いていた1960〜70年代は、日本が成長しているのに何か変だという時代でした。たとえば環境汚染が起きていることも、経済は伸びているけれどサラリーマンの人生は幸せではないかもしれないことも、有吉佐和子は客観的で淡々とした筆致で書いたそうです。だから実はとても重要な作家だ、と。
「何十年前にこれからの日本はこれが問題だと掴み取っている
」
三宅さんも同じ考えで、小説は「早い」、つまり時代の先を書けてしまう、と話していました。映画やドラマは予算がかかるので企画を通すのにロジックが要るけれど、小説は書いてしまえば世に出せるので、本当になるかどうか分からない予言のようなことまで書ける、と。
コメント欄では、有吉佐和子のくだりへの感想がいちばん高評価を集めていて、破綻している、予言している、という話が腑に落ちた、という声でした。
有吉佐和子
青い壺 新装版(文春文庫)

無名の陶芸家が焼いた青磁の壺が、売られ、贈られ、盗まれながら、13の話のなかで持ち主を変えていきます。定年後の夫、遺産争いを愚痴る娘、半世紀ぶりに京都へ集まる女学校の同級生。1976〜77年に月刊『文藝春秋』で連載された連作で、新装版の解説は平松洋子さんです。
- 出版社
- 文藝春秋
- 刊行
- 2011年7月
- 仕様
- 文庫・352ページ
- 楽天評価
- 3.9/5(588件)
- 値段
- 定価 ¥847
2人とも2人目は、夏目漱石
漱石の文章のうまさについて、三宅さんは、漱石は接続詞をあまり使わない、と話していました。三宅さんなら接続詞を入れてしまうところで、漱石は入れずにパッと切り替えるのに、それでもこんなに分かりやすい、と。
三宅さんは、漱石はストイックで厳しい人だと思う、と言いながら、人間をそこまで厳しく見ている人がいること自体に癒される、自分のことまで見てくれている気がしてほっとする、とも話していました。
『こころ』|全方位的に分かったうえで、人間は寂しいと書いている
三宅さんは、作家ではなく作品で日本文学を3冊選ぶとしても、『こころ』はその1冊に入る、と思って持ってきたそうです。教科書には手紙の部分が載っているので、そこだけが『こころ』だと思っている方が多いと思うけれど、「違うんですよ!」と。1冊通して読んでほしい、といつも思っているそうです。
漱石の良さを竹下さんに聞かれると、三宅さんは、びっくりするくらい色々なことが見えている人だと答えていました。三宅さんの考えでは、頭が良すぎる人は普通、理屈が走って、寂しさのようなマイナスの感情を無視しがち。でも漱石は、政治も国際的なことも哲学も分かるうえに、感情にも詳しい、と。
「人間は寂しいということを書いているのがいいなと思う
」
夏目漱石
こころ(新潮文庫)

鎌倉の海で、学生の「私」はひとりの男性と出会い、「先生」と呼んで慕うようになります。けれど先生はなかなか心を開かず、謎めいた言葉で「私」を戸惑わせる。やがて届いた分厚い手紙が、先生の過去を明かしていきます。累計部数が新潮文庫でいちばん多い1冊です。
- 出版社
- 新潮社
- 刊行
- 1952年3月
- 仕様
- 文庫・384ページ
- 楽天評価
- 4.2/5(1,553件)
- 値段
- 定価 ¥473
『それから』|漱石の小説にも、人間の「悪さ」が書いてある
竹下さんの2人目も漱石で、持ってきたのは、漱石でいちばん好きだと話していた『それから』です。『坊っちゃん』は少しドタバタ劇でユーモラスだけれど、『それから』は最初から静かに始まる、その淡々としたところが好きだそうです。
竹下さんは、漱石が教科書に載ったことで、ありがたい校長先生の挨拶のようなイメージが広まってしまうのを心配していました。竹下さんの考えでは、文学は教科書に載らないような人間の悪さを書くもので、漱石の小説にもそれが書いてあるそうです。
竹下さんによると、『それから』の主人公は、親の援助であまり苦労せずに暮らしていて、親友の奥さんへの思いを抱えています。今でいうニートのように何もせずに過ごしながら、このままでいいのかとも思っている。こうした人間の悪さをうまく描いているのが、漱石のすごいところだそうです。
「悪い感情とどう向き合っているかが書いてある
」
そう読むと、漱石が今の人のように読めてくる、と竹下さん。

漱石には、まさに校長先生の話のようなイメージがありました。ありがたいことじゃなくて悪い感情とどう向き合うか、と聞いて、急に親しみが湧きました。学生のとき授業で扱った漱石を、読みたくなる時が来るとは思いませんでした。『それから』、読みたいです!
夏目漱石
それから(新潮文庫)

三十歳になっても定職を持たず、父の援助でぶらぶらと暮らす長井代助。かつて愛しながら、義侠心から友人の平岡に譲った三千代と再会したところから、物語が動きはじめます。『三四郎』に続く三部作の2作目で、1909年に朝日新聞で連載されました。
- 出版社
- 新潮社
- 刊行
- 1948年12月
- 仕様
- 文庫・368ページ
- 楽天評価
- 4.0/5(272件)
- 値段
- 定価 ¥605
『坊っちゃん』は、竹下さんが『それから』と比べて名前を挙げた1冊です。
夏目漱石
坊っちゃん(新潮文庫)

物理学校を出てすぐ、四国の中学校に数学の先生として赴任した、思ったことをそのまま行動に移す青年「坊っちゃん」。周りの人たちのくだらなさや無気力に、正面からぶつかっていきます。漱石が松山の中学で教えていたころの体験をもとにした初期の代表作で、漱石の作品のなかでも広く読まれています。
- 出版社
- 新潮社
- 刊行
- 1950年2月
- 仕様
- 文庫・240ページ
- 楽天評価
- 4.0/5(678件)
- 値段
- 定価 ¥473
『門』|竹下さんが話しているうちに「いちばん好き」を替えた1冊
『それから』がいちばん好きだと話したあと、三宅さんに「『門』よりも『それから』ですか?」と聞かれて、竹下さんは「『門』ですね」。三宅さんには「そんな簡単に替えないでください」と返されていました。『門』はとてもいい、と竹下さん。三宅さんも好きだそうです。
夏目漱石
門(新潮文庫)

親友の安井を裏切り、その妻だった御米と一緒になった宗助は、負い目を抱えたまま、諦めのなかで暮らしています。そこへ思いがけず、安井の消息が耳に入ります。『三四郎』『それから』に続く三部作の3作目です。
- 出版社
- 新潮社
- 刊行
- 1948年11月
- 仕様
- 文庫・320ページ
- 楽天評価
- 3.8/5(176件)
- 値段
- 定価 ¥572
『私の個人主義』は、竹下さんが『門』の話のあとに挙げた、漱石の講演をまとめた1冊です。
夏目漱石
私の個人主義(講談社学術文庫)

講演の名手でもあった漱石の講演を、5つ収めた1冊です。表題作の「私の個人主義」は、漱石の考え方の根にある個人主義を論じたもの。ほかに、文明批評の「現代日本の開化」と、「道楽と職業」「中味と形式」「文芸と道徳」が入っています。
- 出版社
- 講談社
- 刊行
- 1978年8月
- 仕様
- 文庫・170ページ
- 楽天評価
- 4.3/5(117件)
- 値段
- 定価 ¥1,100
竹下さんの3人目は、柚木麻子さん
『BUTTER』|竹下さんが「文学史的な事件」と呼んだ小説
『BUTTER』は、実在の事件をモチーフに、連続殺人事件の容疑者に週刊誌の記者が面会を重ねていく柚木麻子さんの小説で、英語版が海外でとても売れています。竹下さんによると、持ってきた国語便覧をたどると、日本の文学で世界に出ていったのは川端康成や村上春樹さん、大江健三郎さん。その次に来る『BUTTER』は文学史的な事件だと思った、と話していました。売れている理由を三宅さんに聞かれて、竹下さんが挙げていたのはこんな点でした。
竹下さんの推しポイント
- 実在の事件をめぐる報道に切り込んでいる——当時のメディアは、容疑者が料理教室に通っていたことや、太っていること・容姿をめぐって書き立てた
- フェミニズムやルッキズムの話を、日本から問いかけている——日本では、事件の報道で容姿までからかわれてしまう。そのつらさが、世界のフェミニズムの歴史と重なる
- いわゆる富士山やお寿司ではない日本
- 食べ物の描写がおいしそう——ラーメンにバターを入れるところなど
「バターは別に日本食じゃないけど日本っぽい
」
竹下さんが持ってきたのは、英語版の『Butter』でした。日本語の原作はもともと新潮社から出ていましたが、柚木さんが最近、版権を別の出版社に移したので、新潮社の本を持ってくるべきか迷い、英語版にしたそうです。いま日本語で買えるのは、この回の収録のあと、2026年6月に出た河出文庫版です。
柚木麻子
BUTTER(河出文庫)

婚活連続殺人事件の容疑者・梶井真奈子に、週刊誌記者の町田里佳が拘置所で面会を重ねます。梶井が語るバター料理の話に引き込まれるうち、里佳の暮らしも少しずつ変わっていきます。河出文庫版には、第7回野間出版文化賞の受賞スピーチとイギリスツアー日記、鴻巣友季子さんの解説も入っています。
- 出版社
- 河出書房新社
- 刊行
- 2026年6月
- 仕様
- 文庫・596ページ
- 楽天評価
- 3.9/5(130件)
- 値段
- 定価 ¥1,045
三宅さんの3人目は、山岸凉子さん
『日出処の天子』|漫画を入れないと、日本文学史はどうしようもない
漫画家の山岸凉子さんを挙げた三宅さんによると、作品で日本文学を3つ選ぶなら、『こころ』のほかは、村上春樹さんの『ねじまき鳥クロニクル』と、この『日出処の天子』だそうです。
三宅さんは『日出処の天子』を、厩戸王子つまり聖徳太子が、実は同性愛者で超能力者だったら、というところから始まる話だと紹介していました。三宅さんによると、日本文学は、自分は何か悪いことをしてしまったのではないか、誰かを求めてしまうのは悪いことなのではないか、という罪悪感をずっと描いてきたところがあるそうです。『日出処の天子』ほど、そのテーマを仏教に絡めて完璧に描いた話はない、と。
「仏教をテーマにした作品としても神だと思う
」
漫画を入れないとどうしようもなくないですか、とも三宅さん。『日出処の天子』はノーベル賞を獲るべきだし、教科書にも載るべきだといつも思っている、と話していました。
漫画も最初は、漫画なんて読むな、文学じゃない、と言われて怒られてきたものだけれど、『鳥獣戯画』や源氏絵、浮世絵のように、絵とキャラクターで物語を作る日本の文化史の流れの中にある、と三宅さん。少女漫画があったから、今の女性作家がたくさん生まれた、とも話していました。
山岸凉子
日出処の天子 完全版 1

蘇我氏の跡継ぎ・毛人と、のちの聖徳太子・厩戸王子。飛鳥時代の朝廷で出会った2人を軸にした長編漫画です。1980〜84年に『LaLa』で連載され、第7回講談社漫画賞(少女部門)を受けました。完全版は、三宅さんが持ってきた全集版(全8巻)とは巻の区切りが違う全7巻で、カラー原稿や扉のイラスト、予告カットも再現しています。
- 出版社
- KADOKAWA
- 刊行
- 2011年11月
- 仕様
- A5判
- 楽天評価
- 4.6/5(18件)
- 値段
- 定価 ¥2,640
三宅さんが作品で3つ選ぶなら、と挙げたうちの残る1冊が、村上春樹さんの『ねじまき鳥クロニクル』です。
村上春樹
ねじまき鳥クロニクル 第1部(新潮文庫)

「僕」とクミコの家から、猫が姿を消します。そこから始まる長い物語を、新潮社は「謎と探索の年代記」と紹介しています。村上春樹さんの長編小説で、新潮文庫では3部に分かれていて、これはその第1部「泥棒かささぎ編」です。
- 出版社
- 新潮社
- 刊行
- 1997年9月
- 仕様
- 文庫・384ページ
- 楽天評価
- 3.9/5(700件)
- 値段
- 定価 ¥880
今回の記録:2026年9月、三宅香帆さんと竹下隆一郎さんが日本文学史上大事な作家を3人ずつ挙げた回(30分)を視聴。紹介された本15冊を1冊ずつ調べた。 結論:30分の視聴で、2人がそれぞれの3人を選んだ理由と、源氏物語をどこから読むかが分かった。15冊がどんな本で、いまいくらでどこで買えるかは、そのあとの調べもので分かった。
気になった本があったら、読んでみてください。

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2026-09-24

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2026-08-28
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